いちばん大事なこと:養老孟司
養老孟司さんの『いちばん大事なこと』という本を読んでみて、非常に面白かったので、その一部をメモしておきたいと思います。
人工とは、人間の意識が作り出したものをいう。 都市はその典型である。 都会には、人間の作らなかったものは置かれていない。 樹木ですら都会では人間が「考えて」植える。 草が「勝手に」生えると、それを「雑草」というのである。
我々の体は、実は生態系である。 なにしろ一億以上の生物が棲みついているといわれているからである。 消化管の中には、大腸菌をはじめとして、じつに多くの細菌が住んでいる。 食物と一緒に入ってくるから、そんなものは嫌いだといってもどうにもならない。
去年の今日という日を考えてみよう。 その日、私たちの体は、今年の今日と同じように7割ちかく水でできていたはずである。 それじゃあ、去年体に入っていた水で、今年の今日まで残っているのは何割あるか。 ほとんど残っていない。
この一年で、自分が何トンの水を飲んだか、よく考えてみればいいのである。 身体は川と同じである。 川はいつでもそこにあるが、水はたえず入れ替わっている。 自分を川だという実感で暮らす人が、世界にどれだけいるか。 自分を生態系だと思っている人がどれだけいるであろうか。 そういうひとたちに、環境問題をとく難しさは十分おわかりいただけるのではないであろうか。
意識が作り出した世界、頭で作った世界を、私は脳化社会と呼んでいる。 具体的には都市のことである。 自然が作った人間の体と、脳化社会は、あちこちで矛盾する。
歴史の教科書には、有史以来の大事件が山ほど取り上げられている。