冥王星問題
水金地火木土天海冥から冥王星がなくなりました。
冥王星は惑星ではなく、もっと小さな矮(わい)惑星だと位置づけられたのです。 この問題をニュースで見ているうちに、ある本のことを思い出しました。
竹内薫:「99.9%は仮説」です。
この本に、たしか冥王星に関する同じような話が書いてなかったっけな? と、本棚に向かいました。 以下、文中より。
2005年の夏、アメリカが「10番目の惑星を発見した」という驚くべきニュースを発表しました。 その惑星は、冥王星よりも外にあって、冥王星よりも大きいのだといいます。
じつは19世紀にも、おなじような発見があり、おおきな議論となりました。 それはケレスという天体についてです。 この星は、発見当時、惑星だと考えられていたのですが、その後、格下げになりました。 惑星ではなく、小惑星だということになったのです。
小惑星に格下げされた理由は、火星と木星の間には、小惑星帯というものがあり、ケレスはその小惑星帯のなかの一天体にすぎないということがあとでわかったからです。 ケレスが発見された後、その周辺にある天体が続々と発見されたそうです。 その数、何万。 しかし何故、その後に発見された小惑星を、全部惑星にしてしまわなかったのでしょうか?
実は、惑星と小惑星の境目とは、かなりあいまいなものであるらしいのです。
惑星の定義
太陽の周りを回っていて、その軌道上にあるいちばん大きくて支配的な天体。
たとえば、地球の周りには、地球よりも大きな天体は存在しません。 その地域で一番大きくて、支配的な天体だから、地球は惑星ということになります。
しかし、同じ軌道上に、同じような大きさの星が沢山ある場合には、それらはすべて小惑星ということになります。
惑星は大きい。 小惑星は小さい。 というのが当たり前のようではあるが、しかし必ずとも、「小さいから小惑星だ」というわけではないのです。 最終的には、大きさの問題ではなく、数の問題なのです。
惑星か小惑星かの境目は、その付近で唯一突出しているかどうか、ということだけなのです。 突出していれば惑星、同じような天体が何個もあれば、小惑星といった具合です。
冒頭に書いた、10番目の惑星の話。 要はこの星も、惑星ではなく、小惑星にすぎないのではないか? という議論になっていたそうです。 この星は、2003UB313という名前で、2003年10月に発見されました。 この星を、10番目の惑星だとする根拠は、「冥王星よりも大きい」というところ。 しかし、これに反論した人は、ケレスの二の舞になることを、心配しているわけです。
実際天文学者の間では、2003UB313も、小惑星帯の小惑星のひとつにすぎないという考え方が一般的になっています。 そんな常識とも言える中で、何故10番目の惑星などと言い出すのかというと、そのほうがカッコイイからなのだそうです。 なんだか胡散臭い話ではありますが。
現在、科学の世界では、話題作りが大切なのだそうです。 マスコミにとりあげられて世間の注目を浴びると、その研究は重要だと思われて、研究資金のメドがついてきます。 だから、科学者も、研究機関も、自分達の研究を宣伝しなければなりません。 この10番目の惑星の話も、そういった心理的かつ経済的な事柄が背景にあるのでは? と著者である竹内氏は書いています。
2003UB313問題の波紋
この問題は、さらに複雑な話になりました。 9番目の惑星である冥王星も、少し変な惑星である。
「水金地火木土天海冥」の海までは、ほぼすべて平面上にあり、それなりに大きいわけだが、冥王星はというと、非常に小さいうえに、軌道が17度も傾いており、いびつな楕円を描きます。 2003UB313も、既存の惑星に比べて非常に小さく、軌道も傾いています。 もしも2003UB313を小惑星とすると、こんどは冥王星までも小惑星にしなければいけなくなってしまうのです。
天文学者の多くは、冥王星は、ケレスと同じで小惑星にすぎないという見方をしています。 冥王星の軌道上に冥王星と同じかもっと大きな星が見つかるのは、時間の問題なのではないかというわけです。
そして、冥王星は、9番目の惑星から、ただの小惑星に格下げするべきか、という問題がでてきました。 でもいったん惑星にしてしまったものを、小惑星にするというのは、混乱が生じます。 教科書なんかにも載っているわけですし。
冥王星の格下げ問題には、IAU(国際天文連合)が、「冥王星が惑星から降格されることはない」という声明をだしています。 混乱を招くわけにはいかないし、メンツというものもあるからです。 でもそれならば、2003UB313はどうなるのか? という話になるわけです。 冥王星が惑星ならば、こっちも惑星でよいのではないか、ということです。 でも、これをやってしまうと、今後発見された星をすべて惑星にしなくてはならなくなります。 ケレスのように、何千何万と発見される可能性は充分にあるとのことです。
けっきょく、冥王星だけを特例として、惑星あつかいするほかに手はないのです。
以上「99.9%は仮説」より個人的に要約
※結局、降格されてしまった冥王星ですが、IAUの惑星定義委員会で座長を務めたハーバード大のオーウェン・ギンガリッチ教授は、「われわれはいま、矮惑星は惑星ではないという不合理さと直面している。小さい人は人ではないのか」と、疑問を投げかけたそうです。
2003UB313を発見したカリフォルニア工科大のマイケル・ブラウン教授のコメントは次の通り。
「惑星になれず、もちろんがっかりした。しかし、冥王星がもし今日見つかったとしたら、絶対に惑星だとはみなされない。最初は受け入れられにくいが、決定は科学的にも文化的にも正しい。天文学にとって偉大な前進だ」
冥王星やはり惑星か?
冥王星が惑星のカテゴリーからはずされて2年。 国際天文学連合(IAU)による太陽系天体の新たな分類が定着しつつありますが、冥王星を発見した天文学者トンボーの母国アメリカではいまだにこの分類に異議を唱える人たちがいるらしいです(2008/09/26朝日新聞より)。
本当ですか!?
『 生徒』 さんからのコメント— 2012 年 2 月 13 日 @ 9:33 AM